災害時の避難行動を考える~グラハム・レナード氏のお話から~

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ハワイ大学ヒロ校 ケン・ホン氏とシェリル夫人のお話の様子

さて、またまたネタは火山♨観光サミットです。2日目の午前中、ハワイ大学ヒロ校のケン・ホン氏とシェリル夫人が、ハワイの火山活動と火山のリスクへの対応について、更にニュージーランドの火山学者、グラハム・レナード氏より、タウポ火山群周辺の観光業に重点を置いた災害管理について、それぞれお話くださいました。

どちらのお話もたいへん為になりましたが、私が面白いと思ったところだけ、少しピックアップしてお伝えしたいと思います。それを踏まえて、日本の火山周辺の温泉観光地でできることは何か、というのも、すこし考えてみました。

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グラハム・レナード氏の講演の様子

ニュージーランド、タウポ火山帯周辺は、スキー場や温泉が多く、冬場にたくさんのお客様が訪れる一大観光地です。ですが、この火山帯はまだまだ活動する可能性が高いところ。つい最近、1980年代には、住居のすぐ隣で噴火が起こったことも。2001年には街の中で噴火活動が起こり、住民、そして観光客は、常に火山災害のリスクにさらされている状態です。

とはいえ、やはり観光産業は大切なもの。観光客に安心して過ごして貰うために、ハザードマップ、避難マップの作成や、スキー教室やリフトのスタッフ、飲食業をはじめとした地域の観光産業を担う人々に対しての防災教育を行っています。

お話のトータルの内容としては、ハザードマップの作成と教育・訓練、そしてそれらの活動を適切に評価し、常にブラッシュアップすることが大事だ、ということでした。

中でも私が注目したのは、避難訓練の話でした。この火山帯の観光施設では、定期的に告知のもとで行う避難訓練とは別に、抜き打ちでの避難訓練があるそうです。

今から避難訓練がありますよ、と言われれば、どんな行動をとるのが適切か、何度も何度も教え込まれ、みんな一糸乱れぬ避難行動に移ることができますが…

先日見たニュースで印象に残った話があります。抜き打ちの避難訓練が学校で行われましたが、放送が入っても避難行動に速やかに移らず、放送を聞いてぼーっとしていたり、何事もなかったかのように掃除を続けたり、校舎の外へ出たはいいけど、建物から離れず遊んでしまっていたりと、そのような結果になりました、という内容でした。

そのニュースの中では、適切な避難行動を取った子にも焦点を当てていました。ひとりが一目散に走って校舎から離れると、それを追って何人かが走り、迅速に校舎から離れていました。たったひとりの行動ですが、結果として多くの命を救うことに繋がるということが、よくわかるニュースでした。この避難訓練は地震を想定したものだったようですが、火山も同じことが言えると私は考えています。

話を戻しまして、ニュージーランドの観光施設の避難訓練では、予告があったときと、抜き打ちで行ったときとでは、やはり成果に差がありましたが、繰り返すうちに全体的なリスクは減少してきました。避難訓練が終わってもリスクは全くゼロにはならない、ということも同時に示されましたが、予告あり→練習、抜き打ち→本番(疑似)のふたつの避難訓練を繰り返すことで、防災意識が徹底されていくことは間違いありません。

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どんな防災計画も、ひとの身に落としこんでこそ活きるもの。火山大国である日本に住む以上、火山のことを勉強すると同時に、各火山の防災計画についても総合的に身につける必要、大ありだと思いませんか?

そんなわけでして、実際に日本で抜き打ちの避難訓練を行うとしたら、どうやったらいいか、というのを、考えてみました。

一部の方は、「せっかくくつろぎに来てるのに避難訓練させられるなんて!けしからん!どうしてくれるんだ!弁償しろ!損害賠償だ!」とか言い出す方もいらっしゃるかも知れませんが、いざというときに守られる人命が○万人単位であることを念頭に置いてもらって、すみやかにお黙りいただきましょう(笑)。

たとえばですが、ある温泉観光地域が一丸となって、「防災訓練実施月間」を掲げます。一ヶ月の間、立ち寄りの施設、宿泊施設を問わず、どこかで抜き打ちで避難訓練が行われますよー、というのを、まずやってしまうわけです。お客様が減るという別方向のリスクもありますが、たとえば閑散期に実施するなど、時期を選ぶことで、このリスクは減らせると思います。

もちろんスタッフも抜き打ちですので、混乱して適切な行動をとれないかもしれませんが、それを少なくしていくための訓練でもあります。

避難行動に参加していただいたお客様みなさまに、ハザードマップをプリントしたバンダナや風呂敷、携行食となるようかんなどのお菓子をプレゼントし、しっかりと避難行動できたお客様については、施設でのお買い物1回分を還元したり、宿泊料金を半額にしたりすることで、お客様が感じる不快をリカバリできます。

1か月、地域で行われた抜き打ち訓練の結果をまとめ、各火山地域の観光施設で共有することで、新たに明らかになった避難行動時のリスクや、効果のある避難訓練放送の内容などについて、更に話しあう機会を設けることができます。

更に、この避難訓練実施月間で宿泊して抜き打ち避難訓練を体験してくださったお客様は、他の地域においても避難行動のリーダーとなりうるのです。

実際にこれをやるのはかなりハードルが高いと思いますが、防災計画を人の意識や行動に落とし込む、強烈な体験になることは間違いないと思います。……どうでしょうか?

また防災に詳しい人にお話を伺う機会があったら、ちょっとこの話のアラを見つけてもらおうっと(笑)。自分じゃわかんないですしね。

何かご意見などありましたら、お気軽にコメントくださいませ~!

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