そこが聞きたい 熊本地震の教訓

a0114743_11442115熊本県内各地に深い爪跡を遺した熊本地震。地域住民の皆様や、ボランティアの方々、それぞれに思うところの多い災害でありますが、日本地震学会長である名古屋大教授の山岡耕春氏が、熊本地震について語っている記事がありましたので、ご紹介します。

そこが聞きたい 熊本地震の教訓 毎日新聞

山岡氏は、今年の4月から防災教育推進協会理事長、5月から日本地震学会長に就任されています。今まで日本で起こった数々の地震について、とてもお詳しい方です。南海トラフ地震についても著書があり、大型地震についての備えを、と、ずっと呼びかけてこられています。

その山岡氏が熊本地震を見て、

震度7級が前、本震と続いた今回のタイプは地震全体で言うと5%程度の比較的珍しいものでした。

とおっしゃってます。滅多にないタイプの地震だったからこそ、本震までの間に油断が生じた、ということになるのでしょうか。2回目の地震での被害の大きさも指摘されています。

熊本地震のような活断層型の地震は、

人間社会の時間軸とはかけ離れた時間の中で発生を繰り返して

います。500年から1000年単位で動く断層の地震のことは、人間の活動の歴史に残ることもまれで、伝えて備えることは実に困難。震源となった益城町では、そもそも行政も住民も地震に対する関心をあまり持たなかった現状があります。

この地域の防災は大雨や土砂災害が中心で、地震は二の次だったということです。

ここ5、6年ほど、台風が上陸して熊本へ来ることが少なくなっていますが、もともと九州は台風銀座の土地柄です。毎年、梅雨時期になると、ときどき大雨警報が出され、火山灰土壌と相まって土砂災害への警戒が常にあります。

私自身、地元では水害や土砂災害のことを小学校で学びました。実際に7.2水害も体験しました。しかし、災害はいつでも、どこでも、どんなものでも起こりうる、ということを、今回の地震で思い知りました。

しょっちゅう起こる地震にも、まれに起こる大地震に対しても、私たちが普段からできる防災。それは、備えることです。

防災というのは結局は「自助」なんです。いくら国や都道府県が喚起しても、最後は個人の意識が変わらないと進みません。地震から身を守るには、まずは家を丈夫にして、家具を固定して、いざという時に避難できるだけの備蓄をする。これが基本。まず自分でやって、近所で「共助」して、それでもできないことを自治体や国がやる。

阪神・淡路大震災以降、建物の耐震強度への関心が高まり、全国の平均では耐震化されている建物は80%程度まで増えています。

しかし、今回の震源となった益城町では、耐震化された建物はおよそ60%程度。比較的新しい建物は耐震基準をクリアしていますが、この地域は過疎化も進み、高齢者も多いため、建物の耐震化にまでお金や意識が回らなかった、という背景もあるようです。地震への関心の薄さ、日ごろの備えの少なさが、被害を大きくしたことは確かです。

災害を伝えることも大事ですが、1000年に一度のサイクルの大地震などは伝え続けるのは難しいですし、それに備え続けることも非現実的です。結局は、ごはんを食べ、お風呂に入るのと同じくらいの感覚で、災害に備えることを日常に組み込むことが、一番の有効な手段になります。家具を固定するのが当たり前、家には備蓄するのが当たり前、そしていざというときに身を守る術を身に着けておく。これから私たちは、そういう風に進化をしていかねばなりません。

それでは私たちはいつから防災について学び始めればいいのでしょうか?それについても、山岡氏は所見を述べています。

できれば好奇心が旺盛な小学生のうちに自然災害への知識と備えを身につけさせたい

「じゃあもう自分は手遅れじゃないか…」と思うのは早いですよ。カギは好奇心です。子供のようなピュアな好奇心で地震について知ることで、大人になってからも備えを身に着けることができます。今こそ自分の中の少年を目覚めさせ、ワクワク&ドキドキをフル活用して、地球の活動と自然災害を学んでほしいと思います。

それはそれとして、現在、小学校教育は、早いうちから国際感覚を身に着けるというめあての下で、去年から英語のカリキュラムが組み込まれています。英語ももちろん必要ですが、そこに防災、地域のことに目を向ける教育カリキュラムも加えていただきたいところです。

(あとは、受験科目ではないからという理由で地学の授業をやらない高校が多いと思いますが、むしろ必修にしてほしいですね!)

山岡氏は、復興支援についても触れています。

ボランティアという形でもいいし、そうでなく観光客としてお金を落とすことでも復興につながります。若者の意識が変わることは、この国の防災力を高めることに直結してくると思います。

もちろん、様々な事情で現地に来ることが難しい方もいらっしゃると思いますが、スーパーで熊本の農産物を買うことでもたいへんありがたい復興支援になります。あまり難しく堅苦しく考えず、今、気軽に楽しくできることで、熊本を応援していただければなーと思う次第です。

そして、若い方が、熊本を魅力的なところだ、遊びに行きたい、と思えるような観光スタイルを提案するのが、私たちの課題でもあると思いました。その中で、防災力を楽しくさりげなく身に着けるプログラムを提案することができれば、熊本の観光は一歩進んだ素晴らしいものになると、私は考えています。

気が付いたこと、学ぶことの多い、山岡氏のお話です。皆様にもご覧いただきたく、紹介いたしました。

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