熊本地震より2カ月。現地は梅雨の真っ只中で、大雨による土砂災害が心配されています。
先日、このような記事を見つけました。
明治廿二年熊本縣大地震始末、と題された記録は、表紙も含めて2冊で790ページにおよび、1889年の夏に起きた地震について、詳細に記されています。
この記録では、飽田郡(現在の熊本市)を中心に大きな被害が出、熊本城の石垣も損壊したということです。熊本地震と、被害の規模や状況がとても似ており、この地震の教訓や記録がしっかり伝わっていれば、と悔やまれるほどの内容でした。にも関わらず、このニュースを見るまで、熊本にこんな記録があったことを知りませんでした。とても、悔しい。
地震が起きて地下の水の流れが変わった、という話は、地元でもたびたび語られていますが、大きな地震の被害については、そういえばあまり伝わっていないように思います。
(阿蘇地域は、水害については切実さがありました。小学校の頃からたびたび遭遇してますし、勉強する機会も多かった。地震の避難訓練は、そこまで切羽詰まった感じがなかったと記憶しています。)
一方で、東日本大震災直後に発行された『日本の地震地図』については、九州全体のリスクとして「火山性群発地震と南西諸島の大津波」と題されており、活断層の危険についても触れられていたものの、主な大地震として取りあげられていた地震は主に火山性のもの、津波を伴ったものでした。
東日本大震災以降、プレート境界型地震に注目が集まっており、次に大きな地震が起こるのは南海トラフだと予想されている中で作られた本なので、無理のないことだと思います。しかし、この本の内容から、熊本であれほど大きな断層地震が起きるとは思えませんでした。
大分県から熊本県および長崎県南部に抜ける地域に活断層が集中している、内陸型地震の危険度が高い地域、と明記されてはいます。が、次のページでは、九州の内陸部で起きた地震について、「多くは火山活動に関連したもの」とまとめられており、断層地震への警戒が向きにくい記載内容と言わざるを得ませんでした。
地震を学ぶためのとっかかりにはなると思います。この内容で後世に地震災害や地震の危険性が伝わるか、という点については、疑問の念がぬぐえません。
この本の帯には、『地震はいつも同じ所で起こります』とあります。
先日のガイドフォーラムでお邪魔した丹那断層公園をはじめ、鳥居と石段が横にずれた火雷神社など、災害遺構が数多く残され、86年前の断層地震を今に伝えています。
調査の結果、丹那断層は700~1000年周期で活動することが分かっています。
これから、少なくとも600年以上、この地震と断層活動のことを伝えていかなければいけないということになりますが、きっとここは伝えていくことができるんだろうなと思いましたし、ジオガイドの方の、災害の語り部を担う覚悟も感じられ、とても勉強になりました。
熊本は、たった127年前の地震を伝えることができませんでした。今度こそ、この地震のことを、127年前の反省と共に後世に伝えていかなければいけません。
リスクをまとめた本も、詳細な記録も、それぞれに必要ですが、やはり、丹那断層公園のように、目に見える形で被災したものを残すことがいちばん必要で重要ではないかと思っています。熊本地震が、何を、どのような形で遺していくか、今後を見守っていきたいところです。
もちろん、ジオガイドとして地震のことも語れるように、勉強を重ねていくつもりです。