謎のご満悦モード(笑)
第一回火山♨観光サミット。つつがなく終了し、おうちに帰ってからノートを見返すうち、ガイド山崎、いろいろと思うところがありました。
今回のサミットで出された箱根宣言では、
1.火山国として、国民と火山との共生を常態化する
2.国とともに活火山の監視並びに観測体制を充実させる
3.人的被害と経済的被害のリスク回避に取り組む
の三つの項目が掲げられました。ものすごく簡単にぶっちゃけますと、
1.日本は火山が多いんだから、みんな火山のこともっと知ろうぜ!そんでもって火山のことを伝える時は確かな情報をしっかりとお伝えしようぜ!
2.ぜんぶの火山にかかりつけのお医者さんを置こう!情報はあっちこっちから出ないように、ひとつのところにまとめてから出すようにしようね☆
3.火山が大人しいときから火山について勉強して、危ないメに合わないような知識を身につけよう❤ 活火山によりそって生きる素晴らしさと危なさは両方とも、知らない人と共有しよう!
ということです。
それぞれの日程の中で、箱根の山のなりたちや今までの噴火について、火山によって噴火のリスクの減らし方が違うことが話し合われ、火山の傍にある観光地で商売をしている人や働いている人が、それぞれの事例を持ち寄って情報を共有しました。大会の目的は、各観光地が情報を共有して問題解決をスムーズにはかれる体制をつくることなので、これはほぼ、達成できていると思います(はいここで難しい話おしまい)。
ひとつひとつの事例は、私もすごいなと感心・感動・感嘆するものばかりでした。
ですがひとつ。気付いてしまったのです。
たとえばですが、私は生まれておよそ36年を阿蘇の山の中で過ごしました。私にとっては、海は山の上から、遠くでキラキラしているものでした。だから、海のそばにくると今でも軽く2時間くらいは「海スゲー!波ヤベー!船パネェ!」を繰り返すくらいどきどきします。しかし海のそばで生まれて育った人にとっては、海も波も船も当たり前です。海のそばで生まれ育った人にとっては、感覚の深いところに、海への感謝や畏敬の念があるでしょう、しかし私がその話を聞いても、感心こそすれ、感覚で理解する、腑に落ちることは難しいのではないでしょうか。
もちろん逆も然りです。
つまり、火山のそばで生まれて暮らし、恩恵を受け、リスクも飲み込んで生きている、火山と温泉と観光の中で生きているわたしたちの感覚って、限りなくローカルなものなんですね。噴火警戒レベルに生活の糧である観光業が左右され、自身の生活も脅かされる可能性も含めて、ある意味、当たり前に生きています。
その感覚から、「火山をきちんと学んで理解すれば、減災につながる」としたところで、果たして火山に直接かかわりがない暮らしをしている人に共感してもらえるものでしょうか?火山は遠いもの、噴火して爆発して怖いものという認識を改めさせるほど、強いパワーがあるでしょうか?
ニュージーランドの防災マップ。自分の現在地にどんなリスクがあるか、すぐわかります。
避難経路や、行動の指針を、どれほど地域が一体となって示しても、お客様にとっては一過性のことであり、危機感を抱いてこれらをチェックすることはないでしょう。ひとつひとつの火山は、噴火のクセや周期が違いますが、それらについても知っていないと、「今のこの火山の噴火警戒レベルが何を意味しているか」がわからないのではないかと、私は思うのです。
さて、2015年9月は、阿蘇も少し大きめの噴火をしました。モクモクと噴煙が上がる様子がテレビで伝えられるやいなや、旅館やホテルではキャンセルが相次いだそうです。勢いよく煙が上がる火口の様子はインパクトが大きく、だからこそ怖いと思うのは無理もないことですが……
このモクモク動画、実際の噴煙のスピードの5倍から10倍の早回しだったんですよねー。
こういうことをメディアにやられると、テレビでしか阿蘇を知らないひとは、「ヤダ火山こわいわ!」となっちゃうわけです。早回しするなとは言わないけど、動画の隅に「○倍速」とかテロップ入れて、キャスターも動画が早回しであることを一言いってくれれば、これは防げたのではないでしょうか。
バスの車内で大涌谷のいまを撮って出し!レア画像!
箱根も同じ被害にあっています。箱根の噴火警戒レベルが3に上げられたとき、「あの桜島と同じレベルだ!噴火だ!ヤバイ!」と、ニュースでも触れられていましたし、そう思った方も多かったでしょう。ですが、だけど、でもですよ。
桜島のレベル3と、箱根のレベル3は、同じレベル3でも意味が違います。桜島は灰を噴き出すタイプの噴火ですが、箱根の今回の火山活動は水蒸気がものすごい勢いで出るタイプです。警戒範囲もそれぞれの山ごとにキロ単位で違ったりします。即座に、盲目的に、『噴火だ!危ない!!』と思う方が、逆に危ないように思うのですが、いかがでしょうか?
火山の恩恵、温泉❤
火山や、火山活動の恩恵やリスクを直截的に負わないひとに対しては、また違った切り口でのアピールが必要となってくるし、その一端を担うメディアの方々については、火山報道のありかたを、再度、もっぺん、最初の最初のはじめっから、考え直してほしいな!と!思います!!!!
火山のそばで生きて、直接恩恵を受けている温泉観光地の我々は、われわれなりの備えと学びが必要です。これは共通認識として、これから火山♨観光のネットワークの中に根付いていきます。私たちは更に、普段火山のそばにいない方々についても、火山の素晴らしさと、いざというときの身の守り方などのアプローチ方法を模索していくべきだと、強く、強く、思いました。