7月25日、くもり。この日は、阿蘇ジオパークガイドが地震と断層を学ぶ研修会が実施されました。
20名以上の赤ベスト軍団です。壮観です。
阿蘇のガイドは帽子で個性出し。阿蘇とはいえ、近頃は暑くなってきています。熱中症対策が欠かせません。
全員集合を確認して、現地へ出発です。
新聞などで、たびたび取り上げられていて、ご覧になった方も多いと思いますが、地割れが起こっているところは、大きな段差ができたり、道路が波打ったりしていました。
メジャーで落差を測ったり、現れた断面を観察したりしながら、専門家のお話を聞きます。
私の身長が158センチメートルです。ここだけで、およそ120センチの落差が確認できます。カメラアングルからお分かりかと思いますが、私が立っているところはまだ段差の途中。ここの段差は約180センチメートル、と、ガイド仲間の計測で確認しています。
お互いに疑問を出し合ったり、先生のお話を確認したりと、阿蘇のガイドは熱心です。
このような地割れが表面に出てきているところは、水がたまりやすい状態になっています。なぜこのような地割れができるのでしょうか。断層由来という説と、昔の河川改修の跡に沿っているという説の両方があるようですが、まだ専門家の中でも意見が分かれるところです。
阿蘇のカルデラ地形の中には、昔、水がたまっていた時期があります。立野というカルデラの切れ目ができたことで、徐々に水は抜けていきましたが、それでも相変わらず、ここは水をたっぷりと含みやすい地質です。水を含んだスポンジ、ということが多いですが、先生曰く「プールの上にザブトン」状態。プールの水が揺れたことで、ザブトンが崩れて、重なったり離れたりした、という表現で、地割れの説明をされていました。
さらに、あるガイドが、水がたまっている部分に、川のそばにあるはずの植物が生息していることを発見していました。もともと田んぼだったところで、川からも距離があるところですが、河川だったときの土地の記憶がここにあったのでしょうか。不思議で気になるところです。
右奥の山が低くなっているところが二重峠。地割れは部分的には杉型(つくりのノサンの方向の意味です。)に筋が入っていますが、全体的にみると、二重峠に向かっているように見えます。
雨雲が迫り、いつ雨が降ってもおかしくないお天気になってきましたが、不思議と、ガイドが外歩きをしている間は、雨は降らないでいてくれました。
その後、さらに内牧市内で、地割れがどのように人間の生活圏に影響を及ぼしているかを見てきました。地割れの段差によって、家が大きく傾いています。道路も120センチメートルほどの段差がありました。その段差の断面を見てみると…
最初に目に留まったのがコンクリート。あらやだ、こんなもの入れてかさ上げしてるわ。
それよりも気になったのが、この赤い石でした。杵島岳とか、草千里火山とか由来の石じゃないかなーと思って、先生に声をかけてみてもらいました。詳しく調べないとわかりませんが、杵島岳など由来の可能性は高そうです。
しかし先生、この断面をさらに見て、あることに注目していました。
先ほどのブロックが入っていた断面のお写真を、ここで今一度。
下のほう、黒い土の層の上に、灰色の小さな石の層があります。(8センチメートルくらいでした)
その上に堆積している石が、案外と粒ぞろい。
「ここは川岸だったかもしれませんね。堆積物をさらに埋めて造成したんでしょう」
こんな住宅地が、昔は川だったかもしれないなんて!と、衝撃を受けました。土地の歴史を調べて、そこが本当に安全な土地かどうかを知っておく必要がある、と、簡単に言うことはできますが、日本全国どこを見ても、本当にリスクがゼロの安全なところなんてないに等しいではないですか。だってこのあたり、おうちがいっぱい建ってます。これだけ家がたくさんあるなら、うちも大丈夫って、きっと思ってしまうと思います。
大事なのは、自分の住まいにあるリスクを知って、避難の準備を日ごろからしておいたり、保険をかけておいたりすること。いつでも、どこでも、どんな災害も起こりうる、と、肝に銘じておくことではないでしょうか。
最後に、研修で学んだことで、お伝えしたいことがあります。
火山にも、脅威と恩恵があります。地震には恩恵がないように思えますが、このような断層活動による地震によって、川筋ができ、川の恵みを受けることができます。そして、川が作った台地は平らで、道路が作りやすくなります。断層活動には、川や道路を作ってくれるという恵みの面があるのです。
熊本地震は、非常に大きな災害でしたが、そういうときだからこそ、人間の時間感覚では知覚しにくい地震の恩恵にも気づくチャンスだと思いました。
久しぶりに阿蘇のガイドらしい活動ができて、非常に充実していました。たいへん勉強になりました!
まだ、各地の被害状況などもあり、ガイドツアーを実施するまでには至りませんが、いつ、どんなお客様もお迎えすることができるように、阿蘇ガイド一同、研鑽を重ねてまいります。