阿蘇のきずあと② ~突撃…自分のジオパーク~

滞在二日目。雨。この日は、まず阿蘇山上への登山道、阿蘇駅前からのルート(通称坊中線)へ入ってみました。道路の崩壊の様子は、ニュースでも新聞でも見ていたのですが、まず、少しでも近付いてみよう、どこで規制がかかっているか確かめてみよう、という考えで、車を進めます。

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このルートの通行規制は、坊中のキャンプ場のところでかかっていました。(キャンプ場までは来ることができます)

P1090265ここには、夏目漱石が阿蘇へ来た時の体験をもとにして書いた小説、『二百十日』の記念碑があります。今年は、漱石生誕150周年・没後100年。実は、これを記念して、二百十日を題材にしたジオツアーなども計画されていました。

漱石さん、ここでお山に入れなくなって、悲しんだだろうな。

警備員さんも生活が落ち着かない中、安全確保のために頑張っていらっしゃいました。お立ち寄りの皆様におかれましては、くれぐれも無理な進入などなさりませんよう、お願い申しあげます。

その後、南阿蘇方面を見て回ることにし、先日完成したばかりの迂回路の確認に、通ってみることにしました。

南阿蘇エリア、特に立野に近いあたりは、阿蘇の中でも被害が大きかったところです。崩落した阿蘇大橋も、南阿蘇村への貴重な交通道路でした。以前の様子とどれほど変わっているか、見届けなければと覚悟はしていたつもりですが、

P1090302畑がごっそりと崩落していたり、

P1090311崩れかけている家が道路側に向かって傾いていたり、

P1090344災害ごみの収集場所が既にいっぱいになっている様子や、崩落した丘の上で辛うじて立っている家のあぶなっかしい様子など……見ているだけで、涙が止まらない。

時折、ワイパーが役に立たないほどの雨。余震もないとは言い切れず、土砂崩れの危険は刻一刻と高まります。せっかく開通したこの道も、帰りには使えなくなっているんじゃないかと、そういう不安もありましたが、よくぞここまで戻してくれたという感謝や、今この景色を見ながら暮らしている方達はどれほどお辛いだろうかという思いが、どんどん湧き上がってきました。

P1090367南阿蘇に入り、まずは中松駅に立ち寄ります。今は電車も通らず、人が来ない今、中が荒れているのではないかとどきどきしながら入ると……

ベンチの上に、こんなファイルが。

P1090389中には、南阿蘇村で毎日発行されている災害情報が、きれいに綴じられていました。

はじめは、被害の大きさを伝えるのが精一杯だったものが、日を追うにつれて、避難場所や役所への届け出の案内になり、ときどきは、引き裂かれた阿蘇を想う一節も。南阿蘇のひとたちが、余震に苦しみながらも、心を一つにして危機を乗り越えようとしている様子が、とても伝わってきました。

IMAG9465駅舎では、7月におもちゃ博物館&おやつカフェがオープンする予定だということです。

P1090411更に、叩きつける雨の中、白川水源へ。ほとんど人もおらず、水面も雨で荒れる為、水底の砂の様子などを観察することはできませんでしたが、受付では交通情報などを確認することもできました。

水源や温泉の異変があちこちで起こっている中、ここは地震の影響も少なく、落ちつきのある佇まいを保っていました。水量も特に変化はないということで、阿蘇のおいしいお水は健在です。

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物産館は元気に営業中!地元の方が作った新鮮野菜や、ここでしか手に入らないお菓子などが並んでいます。特産品のなすまでガッツポーズしていて、思わず笑ってしまった次第。

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そして、高森駅。トロッコ列車が出番を心待ちにしながら待機している、南阿蘇鉄道の終着駅です。復興応援記念きっぷや、南阿蘇鉄道グッズなどが売られており、鉄道大好きな同行者がめちゃテンションアゲアゲ状態でございました。

P1090431ここで、駅員さんたちにお話を伺うことができました。

南阿蘇鉄道は、昭和3年の開通以来、地元の方に愛されてきました。開業の日に生まれた女の子が、名前を『駅子』と名付けられるほど、喜ばれた鉄道の開通。時計など普及していなかった時代、お日様と踏切の音を時計代わりに、畑仕事に精を出してきた、南阿蘇の原風景。

そして、地元の人にとっても大切な交通機関ですが、外からのお客さまにとっても、南阿蘇を観光する上で欠かせない、大事な鉄道だということ。駅のカウンターに置かれたノートには、日本全国いろんなところから、今の南阿蘇鉄道を見に来て、心を痛めてくれたひとたちの、優しい言葉に溢れていました。

現在も、皆様からたくさんの応援を頂いていますが、南阿蘇鉄道の復旧に向けては、まだまだ多くのご支援が必要な状態だということも、伝わってきました。

トロッコ列車よ、もういちど。きっときっと、また会えますように!

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阿蘇谷への帰りは、高森から坂梨に抜ける道を。水害の直後に作りなおしたところは、さすがにびくともしてませんでしたが、脇の牧野の中に亀裂が入っているのを見ると、何とも言えない気持ちになります。

次の日には、雨が上がってくれますように。祈るような気持ちで、ハンドルを握っていた、ガイド山崎でした。

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