昨日の願いが通じたのか、朝からゆっくりと、天気が良くなってきました。
山肌を撮るには、まだまだガスっていますが、ひと安心の青空です。
阿蘇滞在三日目のこの日、巡ってきたのは小国郷方面。大分へ抜ける道のトンネルが塞がっていて、遠回りが不便だけど、比較的被害が少ない、と聞いていました。
まずは、内牧を抜けてミルクロードを目指しました。
信号の角の老舗ホテル、角萬さんは、敷地内に地割れなどがあり、現在営業を見合わせています。立ち寄り温泉でお世話になっただけに、つらい。
しかし、小国へ向かう道は、たびたびの地震でも大きな崩れがなく、安心して通れました。冷たい風が気持ちいい!
最初に立ち寄ったのは、やっぱり、大観峰。阿蘇はここに来なきゃ始まらない。
岬に向かう途中から見える草原に、以前は見られなかった亀裂が観察できました。
向こう側の崖面に、崩落もあります。
こうして日々、阿蘇のカルデラは拡大を繰り返しているのです。
雄大な景色と、名物プリンソフトを堪能し、更に北へと向かいます。
次に訪れたのは、鍋ヶ滝です。昨日までの雨の影響で、滝の水量が増えていました。
ここは、滝の裏に歩いて回れることから、裏見の滝とも呼ばれていますが……
今回の地震で、落石があり、裏側へ入ることができなくなっていました。滝の形も、なんとなく変わったような気がします。
この鍋ヶ滝、私がジオガイドになるときの試験で、バーチャルジオツアーの題材に選んだところです。滝の成り立ちや、柱状節理の説明のあとに、
「日々こうして滝の形は変わります。今日見ている景色が、明日見られるとは限りません。じゃあ、いつ見るの?今でしょ!
こうして今、ここにいる私たちが、同じ景色を見ているということは、実はとてもすごくて幸せなことなんです。」
という話をしました。この時は、まさか本当に滝の形がかわるようなひどいことになるなんて思いもしなかったのですが、今まで、たくさんお友達を連れて来て、現地審査でも来て、みんなで同じ形の滝を見ることができたことが、どれだけ幸せだったか、と。そういうことを、痛感した次第です。
私がジオガイドとして活動するなかで、おそらく最も多く訪れた場所が、ここ、遊水峡です。世界にかかる2回の現地審査の両方で、私はここを担当し、ご案内をしてきました。
阿蘇の9万年前の火砕流で埋め立てられた谷に、川が生じ、岩盤をなだらかに削ったことで、天然のウォータースライダーができました。全身全霊の川遊びができる、夏にぴったりのジオサイトです。
行くまでの道が少し狭いですが、崩落もなく、以前とまったく変わっていませんでした。
ここはとにかく水遊びが楽しい!黒いギザギザのところを踏むのが滑らないコツです。
湧水で淹れるコーヒーも、おいしい♪
併設されているカフェの名前が、そのものズバリ、「ゆうすい」だったりします。
木陰に包まれて涼しいカフェで、オーナーの穴見さんにお話を聞くことができました。
この地震で、小国は比較的被害が少なかったですが、あちこち道路が寸断し、不便は否めないそうです。観光客が夏までにどれくらい戻ってくるかも心配されていらっしゃいますが、穴見さん、ジオパーク活動にたいへんご理解のある方で、
今回の地震で、被害もあったけれども、阿蘇のなりたちや断層活動など、ジオパークとして語れることが増えた。水害も噴火も、地震も活かして、深みのあるジオパークになってほしい。マイナスなことばかりではないでしょう。
と、阿蘇ジオパークを力強く励ましてくださいました。
おいしいコーヒーと、オーナーの理解と応援。昨日まで、災害の話をたくさん聞いて、ショックでくたびれていましたが、ここにきて元気をもらいました。
更に、やってきたのは、杖立!
いつもは5月のゴールデンウィークまででいなくなるこいのぼりが、たくさん泳いでます!
こいのぼりの掲示期間が5月いっぱいに延長されており、杖立の空の、華やかで賑やかな彩りとなっていました。
杖立には、宿泊客や立ち寄り客が自由に使える蒸し場が、いくつかあります。コンビニで卵を買って蒸そう!と思っていたら、なんと売り切れ。地震の影響でお客様が少なく、タマゴが売れないため、入荷を見合わせているということでした。
少しでも地元に貢献しようと、小国ジャージー牛乳と、サクラで作られたくまモンピンバッジを購入。きっとまたくることを誓って、お店を後にしました。
杖立といえば、温泉。同行者と二人で、入れ替え式の家族湯へ。
1時間で、600~800円。お湯は最初の30分出し放題。今日、私たちのために湧き、私たちを温めて、まだ大地に還る温泉のお湯。たいへんな贅沢でございます。
源泉はかなり熱いのですが、うめるためのお水も岩清水、100%小国産です。お肌に優しく、香りも柔らかく、骨まで茹でられて上機嫌❤ やっぱり阿蘇は温泉ですね。
今はまだ、余震にも、道路にも、不安があることは事実です。安全面でいえば、まだまだ大声で「ぜひ来てね!」とは言えないかもしれないですが、それでも、来てくれたらせいいっぱいおもてなしするよ!というエネルギーが、阿蘇の中には満ちています。
梅雨を乗り越えて、夏休み。その頃には、道路事情ももうすこし良くなっていると思われます。
ほんの一日、ほんの一か所、どこかに立ち寄ってくれるだけでいい。絶対に気持ちいいし、おいしいし、楽しめます。私が保障します。
どうかこれからも、阿蘇をよろしくお願いします。