阿蘇ジオパークのガイドを努めております、私ガイド山崎。ブログを始めて早1年、その間にも数々のジオパークへ突撃し、ジオガイドのお集まりに参加し、研鑽を重ねて参りました。今まで出会った多くの人の話を聞くうちに、世にも奇妙なウィルスの存在に、気が付いたのです……
その名も、火山性ウィルス。
このウィルスに罹患すると、どのような症状に陥るのでしょう。そして、どのような対策を取ればいいのでしょうか。私の1年間の調査をもとに、お知らせしていきたいと思います。
【第一段階】火山性ウィルスへの免疫がない状態
これは、火山のそばで暮らしていない方、特に都会生まれ都会育ちの方に顕著ですが、
「え、火山噴火したの!?コワーイ!」
「やだー、火山灰キタナーイ」
などの、火山に対するアレルギー症状が出ている場合と、
「噴火?別にキョーミねーし(笑)」
「立ち入り規制だってー!入ってみよーぜ!!イェーイ、俺勇者ー(笑)」
といった、危険を正しく理解できていない症状が見られる場合があります。
火山の近くへ行くことができない、火山の危険を正しく理解しないことに加え、きれいな湧き水や温泉が火山の恵みであることに思い至らないケースも見受けられます。
【第二段階】火山性ウィルスへの免疫ができた状態
各火山の噴火のリスクの確認や、ハザードマップの扱い方の習得、正しい避難行動を学習することにより、火山地域へ観光へ出掛けることができたり、風評被害を食い止める言動ができるようになります。
ひとつの火山の火山性ウィルスの免疫ができると、他の火山の火山性ウィルスの免疫も身につけやすくなります。また、複数の火山性ウィルスの免疫を重ね持つことによって、ウィルスそのものへの理解が早まり、より安全に行動できるようになります。
火山の恵みを知り、満喫できるのも、第二段階からです。
※対策として、まだ免疫を持っていない方は、ワクチンとして桜島・錦江湾、霧島、阿蘇、島原半島、箱根、伊豆大島、洞爺湖有珠山、十勝山麓などの火山をテーマにしたジオパークへお出掛けすることが有効です。
【第三段階】火山性ウィルス発症①
発症の初期段階では、まず火山噴火が嬉しくなります。
噴火の形態や頻度が気になり、他の火山と比較を始めます。
人によっては、今までの噴火の歴史を調べたり、火山防災への興味が高まる場合もあります。噴火警戒レベルをチェックするのが日課になり、火山によって異なるハザードエリアを把握しはじめます。
※対策として、定期的に火山防災フォーラムへ参加すること、地域の火山被害をまとめた資料などを定期的に閲覧することで、より火山への理解を深め、精神の安定を図ることができます。
【第四段階】火山性ウィルス発症②
更に症状が進むと、火山灰や火山礫などを手に取り、
「新鮮な火山噴出物…うふふ❤」
などと言い始めます。
火山岩を瞬時に見分ける能力を備えたり、火山噴出物の堆積層に興奮して奇声を発するなどの行動が見られるようになるのも、第四段階からです。
「これね、地球の中にいたマグマのしぶきなんだよ!地球と繋がってるんだよ!」などと急に力説し始めたりするため、早急に鎮静させなければいけません。同じ火山性ウィルスを持った患者とグループにして、好きに語らせるのが最も有効な対策となります。それが叶わない場合は、まず火山から物理的に距離を取りましょう。禁断症状が出てきたら、火山の写真や動画などで宥めてください。
第三段階、第四段階の患者は、言葉を交わす前から、お互いが患者かどうかを見極めるようになります。登山用の小物やモンベルのパーカー、登山靴や20リットルリュックサックなどの装備などから判別しているようだと、調査の結果判明していることを申し添えておきます。
【第五段階】キャリア(生まれたときから免疫がある状態)
火山エリアで生まれ育った方の大半が、第五段階にあたります。
生まれたその日から、お山は噴火するもの、灰は降るもの、という環境で育つため、必要以上に火山噴火に怯えることがありません。火山噴火による日常生活の不便に耐性もあります(感じないわけではない)。
親から子へ、子から孫へと、防災の知恵も受け継ぐケースも多く、学校などでも火山防災を学んだり研究したりするため、火山への関心が高い状態が維持されます。
周囲の環境にも影響されますが、火山性ウィルスの発症はごく低い状態で推移していくことが多いようです。あるいは一時的に発症したとしても、早く鎮静状態へ移行することができます。
キャリア状態が、最も心配が要らないケースといえますね。
さあ、あなたはどの段階ですか?セルフチェックし、自分の罹患状況を確認しておきましょう。
願わくば、多くの方が第五段階になっていきますように。あるいは、第二段階になれますように。