梅雨が明けたら夏休み。プールに、海に、遊園地、花火大会に夏祭り。楽しいイベントが目白押しですが、忘れてはいけないのが夏休みの宿題。
その中でもいちばん厄介なのが、自由研究ですよね。毎日コツコツできればいいけど、できればパッと済ませて、それでいてドカンと派手な研究にしたい。何を隠そう、私はそのクチでした。
そこで、お出掛け先で楽しく遊んで自由研究も済んでしまう、おすすめのジオパークを、阿蘇のジオガイドである私からご紹介したいと思います。
九州の長崎県にあり、日本で最初に世界ジオパークに認定されたジオパークのひとつです。
こちらでは幅広い年代の地層や地形がみられます。島原半島のなりたちと、島原火山のなりたちの両方を学ぶことで、日本列島そのものへの理解が深まるでしょう。
代表的なジオサイトのひとつに雲仙普賢岳がありますが、平成に入って起きた火山活動によって、火砕流被害や土石流被害が出てしまいました。火山と人との共生の中でも、防災を強くテーマに打ち出しているジオパークです。
拠点施設のひとつ、がまだすドームこと雲仙岳災害記念館では、平成噴火の疑似体験や火砕流の体験ができます。また、火山と人との共生をテーマにした体験型の展示を行っています。
そして、この施設の周辺には、当時の家屋が土石流に埋まった状態でそのまま保管されています。
アナログテレビのアンテナや家具も、全てそのままなのが、生活のすぐそばにある火山のおそろしさを生々しく伝えています。
ここは、おじいちゃんたちの部屋だったのかな。子供部屋だったのかもね。そう問いかけながら見てみてください。
一方で島原城周辺では、地盤の変動によって豊かな湧水に恵まれました。街中に水路が張り巡らされ、水飲み場がそこかしこに設けられています。澄んでまろやかな水の味は、島原の人たちの自慢でもあります。
そして、この地域の温泉のいちばんの特徴は、飲むのに適していることです。赤味がかった炭酸の温泉は、島原が海に囲まれているからか、ちょっとしょっぱい不思議な味です。
水飲み場と温泉飲み場が並んで備わっているところもあるので、飲み比べてみてください。
おいしい水と温泉は、火山の恵みです。火山災害を学んだあとは、火山への感謝も感じてください。
【自由研究のポイント】
○火山の怖さ
○火山の恵み
の両方を、しっかりと押さえ、
○その上で、火山のそばで暮らすことを、どう思い、考えるか。
というふうにまとめることです。
ここで防災をしっかりと学ぶのでしたら、火山活動レベルについてまとめ、我が家の身近な火山の規制区域を調べることで、より身近に考えることができるでしょう。
長崎空港からは車で一時間弱、バスも出ていますので、たくさんの乗り物に乗るにもいい機会ですね。
北陸新幹線が開通して初めての夏休み。新幹線に乗った上に、ジオパークにも行っちゃうなら、私のおすすめはこちらです。
なんといっても、恐竜化石の産出量が日本一。「フクイ」の名前がついた恐竜まであります。大小様々な恐竜の化石が、頭からしっぽまで丸ごと展示されていて、とてもワイルドでダイナミック。映画でも恐竜をテーマにしたものが出ていますので、そういう意味でもタイムリーです。
ところが、一部の恐竜は、これと同種のものが、アジアの大陸でも発見されていることがわかっています。
つまり、ふくい勝山ジオパークは、大陸から離れ、日本列島の基盤となった地層のことを、恐竜を通して学べるところなんですね。恐竜は、昔の生態系だけではなく、地面がどう動き、どう変わっていったかも教えてくれる、すごい存在なのです。
しかし発見する人がいなければ、化石もただの石でしかありません。化石をみつけた人は、なぜこの地域にやってきて、住んでいるのでしょうか?その鍵を握るのは、やっぱりきれいでおいしい水があるかどうか。
この地域を流れる九頭竜川では、河川段丘とよばれる段々地形がみられます。この段差に壁をつけ、上をお城や武家のお屋敷にし、下には寺社や町屋ができました。この下の段丘の面では水が湧き、「大清水(おおしょうず)」と呼ばれて日用水に使われたそうで、ここにも地形を活かした人々の暮らしが見てとれます。
そういえば、恐竜、九頭竜川、両方に「竜」の字が入っていますね。繋がりがあるのかどうかはわかりませんが、ちょっと気になるところです。
【自由研究のポイント】
○何故ここでたくさんの恐竜の化石が見つかるのか?
○その恐竜の化石と同じ種類のものが、別の場所で見つかる不思議
これだけでもいいレポートになると思います。プラス、
○恐竜がいた時代の日本列島はどこにあったの?
○恐竜の化石をみつけたひとたちは、何故この場所に来たの?
ここを押さえておくと、ジオ的に最高の自由研究になるでしょう。
金沢駅からはローカル線を乗り継ぎます。バスも出ていますので、のんびりと景色を楽しみながら向かってください。
ここからは、この秋に注目が集まることうけあいのジオパークに注目したいと思います。
現在、世界ジオパークへの認定を目指しているジオパークが2つあります。
いずれも6月に現地での審査を行いました。結果は9月に発表されます。
どちらが認定されるのか、それとも両方決まっちゃうのか、今からとても楽しみです。
夏休みに先取りすべきジオパーク、まずは!
関東圏からほど近く、行きやすいジオパークのひとつ。伊豆半島の各地に、バラエティ豊かなジオサイトを有しています。
ご存じの通り、日本列島は複数のプレートのつなぎ目の上にありますが、伊豆半島は、本州で唯一、フィリピン海プレートの上にかかっているんです。
このフィリピン海プレートが、日本列島に向かって北上するうちに、火山の島や海底火山が半島を作った……
上手く想像できますでしょうか?なかなか具体的につかみにくいですが、日本列島の中でも、ピカイチ個性的ななりたちのエリアであることは間違いないでしょう。
私が注目しているのは、7月の中旬にオープンする伊東ビジターセンターです。伊豆高原駅の中にあり、子供向けの教材も用意されています。ジオガイドも常駐しているので、気になったことはどんどん聞いてみましょう。
伊東エリアで必見のジオサイトが、大室山。なだらかで綺麗な形の山は、山焼きによって草原が保たれています。4千年前にできたばかりの、まあるい赤ちゃん山ですよ。
この山をつくっているのは、スコリアという穴がたくさん空いた黒い軽石です。他の場所の、溶岩でできた硬い石と比べて、どんな性質を持っているのでしょうか?
【自由研究のポイント】特別に2つ!ご提案しちゃいます。
○伊豆半島のなりたち
から、プレートの動きを学んだあとで、
○今後、日本列島はどうなっていくか?
全くの予想でいいので、お子様なりに考えた未来の日本列島を作ってみてください。
ポイントは、海底の地形にも注目することです。伊豆半島、まだまだ大きくなりそうに見えませんか?
○リフトに乗って大室山に登ろう
○大室山は、こんな石で出来ています
スコリアのスケッチなどを添えると、分かりやすいと思います。
大室山は徒歩での入山が禁止されていますが、それも大室山を構成するスコリアの性質のためです。そこまで調べられたら、とてもすごい研究になりそうです。
そして、もうひとつの注目ジオパークは、こちらです。
このジオパークでは、「かんらん石」を見ることができます。かんらん石は、地球の中にあるマントルの性質がそのまま保たれ、表れている石。どんなに深く穴を掘ってもマントルそのものを見ることは(現在の技術では)できませんが、アポイ岳に来たら、それが見られる、ということなんですね。
少々説明させていただきますと、マントルとは、地殻(地球の外側の皮)と、地球の核の間にある中間層のことです。
というと難しくなってしまいますので、記事をご覧の皆様、冷蔵庫から卵を出してみてください。(生卵でかまわないのですが、よりマントルに理解を深めるなら、温泉卵が望ましいです)
私たちが住んでいる地上面が、地殻です。地球の核は、黄身です。マントルは、卵でいえば白身にあたります。
卵の殻にヒビが入ると、そこから白身が漏れてきます。ものすごく乱暴な説明をすると、殻の外に出た白身そのものが、「かんらん石」にあたる部分です。
アポイ岳は、地殻と地殻の衝突によって突き出されてきたマントルで出来たお山なのです。アポイに立つことは、地球の内側に立つということです!……というと大げさになりますね(笑)。
そして、さすが北海道というべきは、あちこちのジオサイトに、アイヌの伝説がまつわっていること。アイヌの人々は、自然を敬い大事にして、厳しい環境の中で海や大地との共生の道を歩んできましたが、そのありようは、現代の私たちが積極的に学びとるに値するものではないでしょうか。
ビジターセンターは無料で入館できますが、12月から3月の間、開館日は応相談となります。夏のうちに行っておきたいですね。
【自由研究のポイント】ここでも2つ!ご提案です。
○アポイ岳ジオパークには、たくさんのアイヌの伝説が残ってるよ
○アイヌの人の暮らし
天気がよければ、アポイ岳登山にもチャレンジしてみましょう。アイヌの人々が見ていた景色が、見られるかもしれません。アイヌの人は、山頂で何をしていたんでしょう…?
○かんらん石ってなあに?
○マントルはどうやって地表に出てきたの?
○マグマとマントルって、違うの?
最後は一緒に温泉卵を作ってください。マントルは、あたたかくてやわらかい固体です。半熟の白身と、とても似ていませんか?
札幌空港、新千歳空港から、それぞれ高速バスが出ています。長旅になりますが、いい思い出になりそうですね!
今からしっかり準備して、いい自由研究と、楽しい家族の思い出を作ってくださいね。
6/29更新※アポイ岳ジオパークの夏の催しものについて変更点がありました。